第6話 夏着物 宮古上布
着物にのめりこんでから半年が過ぎた頃
我が家にはすでに
着物と着物本の山が出来始めておりました。
日々 着物のことで頭はいっっぱいで
お店というお店を歩き回り
題に『着物』とついた本は すべて読み
どーーしてもほしい本は購入し
枕元には 夜寝る前に うっとりとながめるための本が 山積みになっている始末。
そしてそんな暮らしの中で
『宮古上布』
という言葉が 心に刻み込まれていました。
沖縄の宮古島でつくられている 重要無形文化財の織物。
苧麻(ちょま)から 細ーい糸を紡ぎ
なんども岩に打ち付けて 柔らかく 光沢のある糸にしあげて
織られる 夏の着物。
もう究極の あこがれでした。
それがある日 仕事の帰りに偶然見つけたリサイクル着物店で
出会ってしまったのでありまする。
宮古上布あるわよ!ちょっと羽織ってみない?
そんなおかみさんの言葉にみちびかれ
買えるわけもない そのきものを 羽織ってしまったのです。
(なんてったって高級品で 呉服屋で誂えたなら200万ともいわれてる)
さわさわーーっと
風をまとったような心地。
はりがあるのに 薄くやわらかく まさに羽衣。
しかも
実はその着物 下前にかけはぎがある難あり品で
考えられないほど 安かった!
いやわたしにとっては それでも超高級でしたけど。
ぬ ぬげなく なっちゃったんだねえ これが…。
有り金はたききって 買うてしまいましたんどす。
とほほのほ…
白い麻の長襦袢に 宮古上布
ざっくりした麻の帯を締めて…。
はじめての夏着物は ずーーいぶん贅沢なものになってしまいました。
家に帰って着付けてみると
着れないほどではないけれど 寸法が全体に小さい。
なのでおもいきって洗い張りに出したのです。
悉皆屋のおかあさんが いい着物だってとっても喜んでくれて
仕立てなおしを工夫してくださり
かけはぎもなくなり きれいに仕上がりました。
こんなやりとりも 着物暮らしのおもしろさのひとつですね。
木村 真紀 (2010年8月3日)
【木村真紀流】 おきもの解説
宮古島にある植物(イラクサ科の多年草)
右側の前身頃。
着付けた時 下に隠れる。
着物をいったん解いて 反物に戻し 水で洗う。
posted: 2010.08.03